~World Cosplayers~第2回はイラン人コスプレイヤー痛子さん。
迫力のあるセクシーな外見から正に外国人コスプレイヤー像をイメージしていましたが、実際の痛子さんは話し方がとても穏やかで主張も控えめ。
私達インタビュアーにも耐えず気を使って話してくださり、更に日本語がとても流暢で語彙力が高く敬語までも完璧なので“大和撫子”のような方でした。
そんな痛子さんにイランのコスプレ事情・失恋からの復活・コスプレの楽しみ方…などなどお聞きしました。
【~日本から世界へ、世界から日本へ~】
emoma!編集部が注目する、日本または海外で活躍するさまざまな国出身のコスプレイヤーをさまざまな角度から魅力に迫っていく特集です。
スクウェア・エニックスオタクの母の影響でオタクに
お母さんがアニメやゲームが好きだったので、私は元々オタクだったんです。
お母さんはスクウェア・エニックスオタクでファイナルファンタジー(以下、FF)に出てくるキャラクターの顔が本当に大好き。
私が幼い頃からずっと「FFに出てくるような顔の子供が欲しかった!」「男の子が産まれていたらクラウドのコスプレをさせたかった!」って言っています。笑
そんなお母さんなので私もFFは大好きになりましたし、4人姉妹なんですが皆アニメとかゲームとか好きですね。
特に私と一番下の妹は推しがいたりグッズも買ったりするガチなオタクに育ちました。
イランの人は日本が大好きなんです!アニメも流行っています。
イランではカタログでも何でも、少しでも性的なものを想像させる要素があると没収されてしまうので、パッケージは捨てて中身だけのDVDばかりでしたけど沢山見ていました。
母国語はペルシャ語なんですが、日本語の音声に英語の字幕がついたDVDで、小さいときは「ドラゴンボール」、少し大きくなると「ふしぎ遊戯」「スラムダンク」「ワンピース」を見ていました。中でも私は「るろうに剣心」が凄く面白くてハマっていました。
イランの人は日本の文化が本当に大好きなのでコスプレも人気です。
イランでは女性は家の外では顔と手以外は隠さなければいけないので、頭は布で覆っているのですが実はウィッグも駄目なんです。
でもみんなコスプレ好きなので工夫するんですよ!
本来ならウィッグで表現する部分を頭を隠す布で造形してコスプレを楽しむんです。
それが凄くアイデア満載でとっても可愛いんです。
そんな風に以前からコスプレは楽しまれているのですが、残念なことにイランにはコスプレイベントがまだありません。
私がイランにいた頃は家の中なら頭を布で隠す必要もないし、セクシーなコスチュームでも問題ないので宅コスを皆さん楽しんでいたようです。
今はスマホが普及したので宅コスだけでなく、Twitterなどネット上で仲間を募って日時や場所を決め、公園などに集まってオフミーティングのような感じでコスプレを楽しんでいるようです。
来日してお見合い結婚から逃げられた!?
私の家族はイランでペルシャ絨毯を売っていたんですが、日本で売ろうという話しになって一家全員で来日しました。
お母さんはイランと日本のハーフなので、私は逆クォーターですかね!?
今も私とお母さんとオーナーであるお父さんの兄とでペルシャ絨毯を日本で販売しています。
収入が多いお仕事が本業と言うのだと思うので、私の今の本業はペルシャ絨毯の販売員ですね…。コスプレのお仕事が本業と言えるように頑張りたいなと思っています。
「やった!結婚から逃げられる!」って思いました!!
イランは結婚が早くて当時、女性は大体16歳くらいで遠い親戚とお見合い結婚していました。
私も結婚適齢期だったので沢山お見合いの話しがあって凄く嫌だったんです…。
アニメで自由恋愛を知っていたので余計お見合いが嫌だったのかもしれません。
だから日本へ行くことは凄く嬉しくて。
日本に来てからはコスプレイヤーが凄く好きだったので、コミケでコスプレ広場に初めて行った時は「すごい!本当にこんなに沢山コスプレイヤーがいる!!」ってもの凄く感動して号泣しちゃいました。笑
遅咲きのコスプレイヤー“痛子”の誕生!
前からコスプレイヤーさんの撮影はしていたのですが、私自身がコスプレを始めたのは凄く遅くて30歳の時でした。
日本でずっと付き合っていた人に婚約破棄されて…本当に心が痛くて痛くて…。
実は“痛子”という名前も、その頃ずっとずっと心が痛かったから痛子にしたんです。
当初は由来を聞かれてもそのエピソードを話すことすら辛かったので「30歳からコスプレ始めるなんて痛々しいかなって意味で付けました」って答えていたんですが、本当の由来は「心が痛い!」でした。
そんな感じで辛すぎたので、何か新しい夢中になれることがしたかったんです。
でも色々考えてもひと通りのことは既に体験してて、分からない世界に入るならもうコスプレしかない!って思って始めました。
キャラを研究したり、衣装やウィッグの準備、メイクの練習などなど…頭フル回転させて夢中になれたのでコスプレしている時だけは失恋の痛みを忘れることが出来ました。
失恋後の傷ついた私の心を癒やし救ってくれたのはコスプレです!
初めてのコスプレは『FF13』のライトニングのコスプレで東京ゲームショーに一般参加しました。
その年発売されたタイトルだったこともあって、列や囲みは大きかったので嬉しかったですね。
私にとってコスプレは自由自在に自分を変身させられるものなんです。
とても好奇心が旺盛なので、凄いセクシーなお姉さんからお婆ちゃんまで好奇心のままに自由にどこまでも自分を変えられるのがコスプレの魅力だと思います。
あと本気でキャラクターを愛してコスプレされている方が聞くと嫌な想いをされる意見かもしれないんですが、私くらいの年齢の人がコスプレすることで楽しい気持ちを取り戻せるならそれも魅力の一つだと思うんです。
30歳でコスプレを始めることは勇気が必要なことだったし、少し怖い気持ちもありました。
10代や20代の若い子の方が絶対に可愛いと思いますし…。
でもやってみたらキャラクターになりきれたことが嬉しかったし楽しくて。
私ライトニングになれた!?みたいな。
気分が上がるし凄いやる気も出るしコスプレ以外の色々なことにもチャレンジするきっかけにもなりました。
だから“そろそろ落ち着こうかな”と思っている30代や40代の人が、もう一度人生を謳歌する為にコスプレを始めてみるのはアリだと思うんです。
私はアメリカやマレーシアなどへコスプレイベントのゲストや審査員として行くことがあります。
外国ではコスプレは“日本の文化”っていう認識がとても強く、海外の皆さん凄く気を使ってくださるので英語が話せる私にも必ず通訳の方が付きます。笑
だから海外のイベントにお仕事で呼ばれて行く時は通訳さんが付くと思うので言葉は心配ないかと思います。
ただ、行く国の宗教についてだけは絶対に調べて行った方がいいです!
あと海外にはまだコスプレという文化が始まったばかりの国も沢山あります。
そういう国ではコスプレは本当に楽しむという基準でやっているので、キャラクターのイメージを守るということに関してあまり意識してないことがあるかもしれません。
私も日本でコスプレを始めた当初、日本のコスプレのルールみたいなものを知らなくて…。
凄く好きだったので似合わないのにラブライブ!のコスプレしちゃってキャラクターのイメージを壊したと凄く叩かれちゃったことがあったんです…。
私はそこで日本でコスプレをする時には気をつけなくちゃいけないことがあると学びました。
でも海外ではそういう考えが浸透していない国もありますし、外国人なので日本人キャラクターを再現すること自体が日本人より少しハードルが高めなんです…。
実は日本にいる外国人の方からの「再現度を求めるキャラクターのファンの方からの批判が怖いのでコスプレ出来ない…」という声は良く聞きます…。
海外のイベントではそういう点は少し思いやってもらって“なりたいキャラクターになって楽しむ”というスタンスで自由に目一杯いっしょに楽しんでもらえたらなと思います。
イランにもコスプレ文化を根付かせたい
私は自分のことを“おっぱい王”と言っています。笑
Kカップあるので、爆乳キャラクターを再現度高く出来ることが自分のコスプレの強みだと思っているんです。
それで昨年、スマホゲームの爆乳キャラクターのお仕事の依頼が来て喜んでいたんですが、直前で別の方にすることにしましたと断られてしまって…。
その理由が「本物の巨乳の人だと嫌がる方もいるから」だった事が一番のショックな出来事でした。
詰めたりして巨乳のキャラクターを再現するのは良くて、本物の巨乳で再現すると嫌悪感を抱くという考え方にショックを受けました…。
コスプレしたいキャラクターが爆乳じゃない時は女性キャラクターでもサラシを巻いたり、男性キャラクターはやりたくても出来なかったりと苦労は多いんですが、自分が爆乳キャラクターでも苦労するとは思いませんでした。
イベントのステージでコスプレしながらクオリティの高いダンスやバック転している方々を見た時に「コスプレの枠を超えて、こんなことまで出来るんだ!」と感動しました。
私も今後パフォーマンス挑戦してみたいと思っています。
衣装作りも勉強中です。
この前『FF7』のエアリスの衣装を作ったんですけど、お母さんに衣装と認識されず布切れだと思われて捨てられてしまったので。笑
お母さんに布切れだと思われないクオリティで作れるようになりたいですね。
あとはYouTuberにもなりたいと思っています。
創真のコスプレして食戟のソーマ再現レシピ作ってみたり、色々な動画を作りたいなと思っています。
あと細やかな夢なんですが、イランでコスプレのイベントをしたいなと思っています!
日本人の器用さって素晴らしいので、イランの頭を隠す布で造形したコスプレを披露してもらえたらイランのコスプレイヤーさん達が凄く喜んでくれるだろうなと思って。
イランは顔しか出せないのでメイクは進んでいる国なんですが、ウィッグが遅れているのでウィッグに関する悩みが凄く多いんです。
ウィッグの被り方などのHow toから希望の色が出せないとかセットについてなど沢山の悩みや質問にイベントで答えてあげられたらイランのコスプレ文化の為にもなるかなと思っています。
まとめ
遠いイランのコスプレ事情を聞くと、コスプレ文化が世界で愛されていることが実感され日本人として嬉しく思います。
また多くのキャラクターが日本人である中、多くの外国人の方がコスプレの際に再現度を追求する風潮の中で萎縮してしまっているという話しはショッキングでした。
「コスプレ文化が海外そして日本でより発展して、コスプレを通して隔たりなく沢山の人が幸せを感じることが出来たら」と語る痛子さんからはコスプレに対する優しい穏やかな愛情が感じられました。
ご自身が好奇心旺盛と言うだけあって、これからも色々なことに挑戦していくそうなので今後も彼女の活躍が楽しみです。
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