【インタビュー#5】五月うさぎ‐業界屈指の造形コスプレイヤー

第五回目の今回は五月うさぎさんです。
現役コスプレイヤーさんであり、造型師さんである五月うさぎさん。
造型師さんの中でも技術の高さでとても有名な方です。
Twitterの固定Tweetにある作品を見ただけでも、繊細で魅惑的な作品から目が離せなくなってしまいます。
今回はそんな高い技術を持つ造型師コスプレイヤーさんに様々な貴重なお話しを聞かせて頂きましたので、前編・後編に分けて余すことなくお伝えします。

イチ推しコスプレイヤーとは
【~コスプレイヤーの数だけストーリーがある~】
emoma!編集部が注目するコスプレイヤーに焦点を当てて、幼少期から現在までの人生・活動を紐解くことで見えてくる一人の人としての魅力に迫ります。

造形師兼コスプレイヤーの五月うさぎさん001

オタク・美大・衣装・造形

コスプレと造形はどちらから始められたのですか

最初はコスプレからです。
今はやっぱり仕事が優先なので、俗にいう“オタ活”は出来なくて要素が薄まってるんですけど、元々はバリバリのオタクをしていて、17才ぐらいの時に初めてコスプレをしてからずっとしていました。
高校卒業後は昔からずっと絵を描いたりするのが得意だったので、そんな有名なところではないんですけど美大に入ったんですよ。
そこでも授業の一環でコスプレを作って見せたりしてたんですけど、大学2年生の時に先生や生徒に作ったものを各々プレゼンするっていうのがありまして。
その時、絵を見せたら「まぁあまり上手くないね。向いてないかもね。」みたいな評価でして。笑
それでもう一つ用意していたコスプレを見せたら「やっぱりコスプレの方が良いんじゃない?」って褒められてしまって。
結構悩んだんですけど、たまたま所属していたイラストのゼミが自由なゼミだったこともあって、それから本格的に造形を始めました。笑
衣装作りを真面目に勉強して、在学していた2年間でそれまでよりもクオリティーを上げられるような詰めたものを作って、卒業制作も一人だけ衣装を作りました。
それでも今から5年くらい前なので、今見たらやっぱクオリティー含めて次元が違いますけど、頑張ってました。笑

卒業後すぐ独立されたのですか

いや、それから衣装屋さんに就職したんです。
でも衣装業界、かなりブラックなんですよね…。笑
一週間家に帰れなかったりとか色々とあって、体調崩したりして辞めまして。
その後、衣装屋さんでアルバイトもしてたんですけど、やっぱり自分がやりたいようには衣装は作れないものなので辞めて、そこからフリーランスで始めました。
それから今4年目ですかね。

一番最初に始めたのは造形というより縫製だったのですか

そうです。着ることが目的だったんで縫製から始まりました。
学生時代に造形も始めていたんですけど、最初はやっぱり既製品の衣装を買った時にサイズが合わなかったものを改造する縫製から始まりました。
その後やりたいキャラクターの衣装が売ってなくて「やっぱ作るしかない」と簡単な衣装から縫うようになって、そのうち“戦う女の子”とかが好きなので、作りたい物にゴテゴテしたものが出てきて、「これは布だけじゃどうにもならない」と造形に手を出し始めたっていう流れですね。

美大だと作り方など教えてくれる先生が周りに沢山いたのですか

美大出てるって言うと「あ、やっぱり美大で習ったんだね」とよく言われるんですけど、専攻がイラストデザインで全く専門外だったので、全然そんなことはなかったんですよ。
美大は美大でちゃんと習って学んだことはもちろんあるんですけど、衣装や造形に関しては当時からやっぱり作ってる方っていうのはいらっしゃって、運良く造形をちょっとやってる知り合いの方も周りにいたので、そういうコスプレ関連の人からの情報とか、今のご時世ネットが便利なのでネットで調べたりしてました。
Twitterを始めてからは、有り難いことに現役で戦隊モノやゴジラなど製作されているプロの方々と知り合うきっかけが出来たので、今はそういう方々にも相談させて頂いてます。
本当ネットって凄いなって思います。笑

サツキではなくゴガツ

造形師兼コスプレイヤーの五月うさぎさん002

五月うさぎさんという名前の由来を教えてください

「うさぎ好きなんですか?」と良く聞かれるんですけど…ミッフィーは好きですけど、クマのほうが好きだし…。笑
コスプレ始めたのが17才ぐらいのかなりオタッキーな時代で、その時ぜったいオタクな皆さんは一度は通ると思うんですけど、なぜか『不思議の国のアリス』が大好きな時代があって…。
なんでかゴスロリとかゴシック系が好きな時代ってあるんですよ、特に女の子は!
ということで当時、私がハマっていた『不思議のアリス』に3月うさぎっているじゃないですか、私が5月生まれなんでそれをモジって“五月うさぎ”なんですよ。恥ずかしいんですが…。笑
なのでサツキでも良いんですけど、一応“ごがつうさぎ”なんです。

ちょっと恥ずかしいんで名前は変えたいんですけど、12年この名前でやってるので変えるのも面倒くさいし、新しい名前は浸透もしないだろうということで変えずにやっているんです。笑
意外と本当に恥ずかしいんですよ。
コスプレしてる時は大丈夫なんですけど、外に遊びに行ってる時に「うさぎさん!」とか言われると、やっぱり恥ずかしくて。
10代の子達はちょっと考えてコスプレネームは付けたほうがいいですよ。笑

お仕事は大体どれくらい受けてらっしゃるのですか

今は数でいえばあんまり受けてないんです。
始めたての頃はそれこそ単価も安くて“量!”みたいな感じで、1ヶ月に1着以上作ろうと頑張ってたんですけど、あんまり早く作れるタイプじゃないので、短い納期で沢山作るのはもう辞めようと思って。
やっぱり疲れてしまいますし。笑
それで年々受注を減らしつつ、逆に自分自信でもクオリティーが上がってきたと思っているので単価を上げつつやらせて頂くようになってきました。
それでも現時点で入ってる依頼が衣装フルセット3着ですね…。
沢山仕事詰めないつもりが、3着もあるぞって感じなんですけど。笑

今はメインの依頼は趣味でご自身が着られる衣装を個人さん向けに作ってて、時々企業さんから来た依頼を間に入れてやってます。
あと去年からなんですけど、ワークショップを月1でやっているんです。
有り難いことに関西や九州でもやってもらえないかって声が結構あるので、去年は名古屋で開催させて頂きました。
今後も機会があれば色々な場所で開催出来たらと思ってます。
そういうこともあって、製作する時間もだいぶ減っちゃったので、今は依頼をお受けする量を減らしてますね。

自分の技術が盗まれる事よりもやり方を知りたい方に教える喜びが大きい

ワークショップはどのような感じなのですか

主催がスポンジ屋さん(Twitter:@sponge_yasan)っていう、よく造形で使うサンペルカという素材を売ってる会社さんなんです。
有り難いことに私が個人で造形交流会みたいなイベントを開いた時にいらして頂いて、そこからの繋がりなんですけど、その方々が協賛で私が講師として呼ばれてるワークショップです。
ワークショップは一回が休憩込みで6時間、切り方や型の扱い方から解説して、何か一作品完成するようにしてあります。
これを二日間やって、それぞれお客さんは約10人づつなので、二日間で20人前後を教えてる感じですね。
それと今までは1日完結だったんですけど、1月には二日間連チャンの開催をして剣を作りました。
そちらも結構皆さん来てくださって良かったなと思いました。

ワークショップも用意など大変そうですね

慣れてきたんですけど、まぁ思ったより大変ですね、ワークショップは。笑
やっぱりサンプル作ったりとか、色々材料を切り分けて持って行ったりしないといけないので、そこがちょっとバタバタしますね。
サンペルカの切り出しは工場でやったほうが早いのでスポンジ屋さんがやってくれるんですけど、布とか使ったりもするので全員分その切り出しは私がやって持って行きます。

あとは初心者の方や経験者の方など、参加する方によって進行も全然違うので、皆さんに楽しんで目的を達成して頂けるように使い慣れない気を回したりしています。笑
参加者さんは真面目な方が多いので、私が板書するとちゃんとメモしてくださったりして、意気込みを感じるので、私も変なこと言わないようにハラハラしてるんです。

大変そうですが、好きなキャラクターの一部を自分の手で作れるように教えてもらえるのは参加された方にかなり喜ばれるのではないですか

参加された方に良い方がいらっしゃって、わざわざTwitterで「うさぎさんのワークショップ参加して作れました」ってつぶやいて下さったりするのを見ると「やって良かったな」っていう気持ちになります。

最近リピーターさんも多いんですけど、この前リピーターさんが「お陰さまで好きな物が作れました」ってお菓子の差し入れを下さって。
そういうのは本当に嬉しいですね。びっくりしました。
本当に良い方が多いですよね。

ワークショップをされているのでなかなか技術を無償で教えにくい状況があると思うのですが、TwitterやYouTubeで作り方などシェアしている理由は何故ですか

実はワークショップを始めた当初は「追い抜かれるんじゃないかな」とか結構怖くて、始めるのが良いのかどうかと考えていたんですよ。笑
今でもセンスが良い方とか参加されていると「あ、これは抜かされるんじゃないかな」とドキドキするんです。

でもワークショップをやってみて思ったのが、やっぱりやり方を知りたい人が多いし、右も左も分からなくて困ってる人がいるんだったら、シェア出来ることはしたいなと思って、TwitterやYouTubeで動画を上げたり、FANBOX(gogatuusagi.fanbox.cc)でちょっとした解説したりしていますね。

カッター1本で削り出し

造形師兼コスプレイヤーの五月うさぎさん003

今まで製作された中で一番大変だった作品は何ですか

えっと…。笑
ここ一年くらいの中だと2着あるんですけど、1着が去年の11月に作ったアメコミの『アクアマン』に敵として出てくるオーシャンマスターの武器付きの衣装が!
あれが全身鱗だらけで、鱗の一つ一つを切り出して張り合わせて…鱗がそれぞれ動くようにしてあって…胸のところは掘り出しでやって…と。
これがなかなか先が見えなくてしんどかったですね。笑
あれは本当、他の作業を挟んだりも出来ない中、一日中切っても切っても終わらない…終わらない…といった感じだったので。
私は縫製の学校出てる訳じゃないので、衣装の布の部分は他の知り合いの方に頼んでやってもらったので一緒に作ってる感じではあるんですけど。
あれを造って私は色々と鍛えられましたね。笑

あともう一つは『Fate/Grand Order』のレオナルド・ダヴィンチ3点セットは大変でした。
衣装は他の人に頼んだんですけど、グローブも大きくて動くようにしましたし、色々と細かくて…これも大変でしたね。
自分でもちょっと依頼来た時は作れる気がしなかったんですよ。
でも重厚感とか、ちょっと良い感じに出来ました。笑
完成した物をみんなに見せると「意味が分からない」って言ってもらいました。笑

流石にこの二作品はちょっと納品したくなかったですね。笑
もう一回は絶対作りたくないというか作れないので、手元に残しておきたいなっていう気持ちがありました。

そういう難しい依頼が来た時はワクワクするものですか?それとも気が重くなってしまうのですか

気私は…気が重いタイプですね。笑
周りにそういう難しい依頼が楽しい!っていう人はもちろんいらっしゃるんですけど、私はどっちかっていうと終わってからやっと達成感や安心感が出てきて楽しくなるタイプなんです。

造形やっていて一番楽しい瞬間はどんな時なのですか

色を付けていく前に、仮組みっていって素材だけのままで形にするんですよ。
やっぱりその段階でやっと形が見えてくるので嬉しいですし、それから色をつけていく段階もテンションが上りますね。
ただ、そこまでが。笑
型紙作ったりとか、切り出ししたりとかが苦行なんです。

ただ少し矛盾してるんですけど、一番好きな工程は「苦行そう」って良く言われる削りだしだったりしまして。笑
削りが一番、なんだかんだ楽しいですね、私。

削り出しは何の道具でされるのですか

私はカッター一本です。
先輩は包丁とかで削り出します。笑
カッターは切れ味が落ちたら替えなきゃいけないけど、包丁は研げばいいって言ってました。笑
私は怖いのでカッターですね。

削り過ぎてしまうこともあるんですか

全然あります。
私が計画的に物事を進められる人じゃないので、削り出しも取り敢えず削りながら形を捉えていくみたいな面があるんですよ。
やってみると厚みの具合とかバランスとか、それこそ構造とかもやってみて分かるんです。
なんで削り過ぎとかあります。
でも木とか石に比べて、サンペルカはリカバリー方法があって、やり直し効くので性格に合ってるのかなと思います。

リカバリーが効くところもですけど、造形の良いとこは物の使い方はもちろん守った上でですけど、人それぞれのやり方で出来るところで、そういう点も個人的には自分に合ってるなって思う時はありますね。

造形コスプレイヤー仲間

造形師兼コスプレイヤーの五月うさぎさん004

コスプレ活動は現在いかがですか

コスプレは昔は月1・2回やってましたけど、今はもう多くて数ヶ月に1回やれたらいいかなという感じです
元々なんだろ…こんなことを言うのはアレだけど、趣味として着てるんですけど「もっと可愛い子いっぱいいるし」みたいな思いもあったりして。笑
あとは計画性がないので、どうしても仕事が詰まっちゃったり、これくらいの期間でと計画しても、やってみたら凄い時間かかる物だったとかも全然あるので、どんどん追い詰められるという状況がありまして。笑
そんな感じで仕事がバタバタして、自分の衣装が作る時間がなく作れなくて、イベントとか撮影にも行けなくて…みたいな感じで、ほんと数えるぐらいしかやってないですね、今は。
なので時々イベントで会った方とかに「やっと会えました」とか言われますね。笑

仲が良い方もクリエイターさんが多いですか

そうですね。
今ずっと付き合いがある人は俗に言う“造形レイヤーさん”って言われる、何かしら造っている人が多いですね。
って言っても、全然造らない方とも遊びに行ったりしますし会うと必ず造形の話をしている訳じゃないんですけど、やっぱり話しも合うし自然と“造形レイヤーさんコミュニティ”みたいになります。
ワンフェスなんかは参加されてる人がみんなほとんど何か造る方なので、そういった意味でも気が合う方が多いですね。

前編まとめ

前編では大作についてのお話しなど、かなり貴重なお話しを沢山お伺いしました。
次のページの後編ではアトリエの様子や造形の始め方や上達のポイントなどなどに加え、コスプレイヤーさんとしての活動に関してなどより濃い内容となっています。
一つの世界を突き詰めた五月うさぎさんのインタビュー後編(次のページ)も是非お楽しみください。

ギャラリー

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